『ブルーフェアリーを探せ』 シナリオ
■第6場面 人形たちの控え室。(ヘビと宇宙服人形が同じ役者の場合は、早替え)
登場人物=ベッキオ、ミットーリオ、ジュリア、宇宙服人形
照明が灯り、劇団の人形たちの控え室。
からの箱がひとつと、人形掛けにかけられている宇宙服姿の人形一体。
舞台袖から控え室に入ってくる三人。
ベッキオ 「(室内を見まわしながら)いつもと同じ控え室。なつかしいだろう。ジュリア」
ジュリア 「抜けだしてまだ数時間しかたってないんだから、変わりようもないし、なつかしくもない。ただ、ホッとしただけ」
ベッキオ 「そりゃあ、よかった」
ミットーリオ 「ちょっと待って、いつもと違うよ。あれ見て」
ミットーリオが指さす先に、いつもならベッキオがかけられている人形掛けに、宇宙服の人形がかけられている。
ベッキオ 「おい、なんだよ、おまえ。そこは、俺の席だぞ」
宇宙服人形 「ヘイ、ベイベー。君たちこそ、誰よ」
ベッキオ 「ベイベーだと……ふざけんな。俺たちは、ここの花形人形だ」
宇宙服人形 「ああ、いつの間にかいなくなった、古い人形ね」
ベッキオ 「なんだとこら、古い人形だと……」
宇宙服人形 「あ、ごめん。気にさわった? でも君たち、勝手にこの劇団、抜けだしたんでしょう? なんで、いまさら戻ってきたの」
ベッキオ 「おまえには関係ねえだろう。とにかく、そこは俺の席だ。どけよ」
宇宙服人形 「な〜に言っちゃってんの、ベイベー。ここはもう、僕の席。君の席なんか、この劇団には、もうどこにもないよ」
ベッキオ 「なんだと」
ミットーリオ 「どういうこと?」
宇宙服人形 「君たちがいないことに団長が気づいて、それで団長がこの席に僕をかけたんだ。つまり、僕は彼の代わりってことさ」
ジュリア 「でも、あなたのその宇宙服姿では、私たちとは合わないわ。王子様、お姫様のお話に、宇宙服姿のお人形が出てくるのは変よ」
宇宙服人形 「な〜に言っちゃってんの、ベイベー。君たちの席も、もうないよ。君たち三人は、もうお払い箱なの」
ミットーリオ 「うそッ」
宇宙服人形 「本当さ。王子様、お姫様のお話は、もう古いんだよ。これからは、宇宙を舞台にしたスピーディーなお話でなくちゃ、子供たちも喜ばないのさ」
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♪10 baby SPACE 歌=全員
(宇宙野郎)
これからの時代 舞台は宇宙
果てなく広がる 銀河の彼方
だからベイベー 剣はもう古い
そうさベイベー これがビームガン
流れるフォルム シルバーメッキのメット
耐火加工のブーツに 胸についたアラーム
そうさベイベー これがいま流行り
そうさベイベー 格好いいだろう
※だから
baby SPACE oh! baby SPACE
宇宙船に乗って oh!
baby SPACE oh! baby SPACE
見知らぬあの星へ oh!
baby SPACE oh! baby SPACE
一緒に行こうよ oh!
baby SPACE oh! baby SPACE
飛び立つのさ
(ジュリア)
宇宙の果てには 愛があるのかしら
素敵な王子に 頼れる悪人
(宇宙野郎)
ノンノンノン ベイベー それはいないけど
ノンノンノン ベイベー 僕がいるよ
(ベッキオ)
派手なだけでは すぐに飽きられる
(ミットーリオ)
誰にでも好かれる 形ってものがあるんだ
(宇宙野郎)
ノンノンノン ベイベー 今はこれが最高
ノンノンノン ベイベー みんな待っている
※だから
baby SPACE oh! baby SPACE
宇宙船に乗って oh!
baby SPACE oh! baby SPACE
見知らぬあの星へ oh!
baby SPACE oh! baby SPACE
一緒に行こうよ oh!
baby SPACE oh! baby SPACE
飛び立つのさ
(間奏)
そうさベイベー 物語は宇宙
そうさベイベー 銀河の果て
※だから
baby SPACE oh! baby SPACE
宇宙船に乗って oh!
baby SPACE oh! baby SPACE
見知らぬあの星へ oh!
baby SPACE oh! baby SPACE
一緒に行こうよ oh!
baby SPACE oh! baby SPACE
飛び立つのさ
*******
ベッキオ 「宇宙だと」
宇宙服人形 「そうだよ。君たちのように、剣を抜いてのチャンバラごっこは、もう流行らないのさ。今はレーザー銃の時代。この腕にとりつけたベルトからだって、レーザービームが発射されるんだ」
と、宇宙服人形が腕をベッキオに向ける。
危険を察知してあわてるベッキオ。
ベッキオ 「やめろッ」
宇宙服人形 「やだなあ。おもちゃだよ。本物のレーザービームが出るわけないじゃない」
ベッキオ 「このやろう」
宇宙服人形に突っかかろうとするベッキオを、ミットーリオが止める。
ミットーリオ 「じゃあ、なに。団長は、お話自体を変更しようとしているの? もしそうだとするなら、僕たちがいなくなったから、やむなくそうするわけじゃないよね」
宇宙服人形 「な〜に言っちゃってんの、ベイベー。僕がここにいるってことが、それを意味してるじゃない。団長は、前々から、新しいお話に変えようと考えていたんだ。そして僕を作っていた。だから、君たちがいなくなっても、団長はそんなに困らなかった。あとの二体だって、一体はもうすぐ完成するし、最後の一体だって、徹夜して明日の開演までには、なんとかするんじゃないかな」
ミットーリオ 「じゃあ僕たちは、どっちにしろ、お払い箱になる運命だったんだ」
宇宙服人形 「残念だけど、そうなるね」
ジュリア 「じゃあ、私たちはこれからどうなるの?」
宇宙服人形 「明日は美化活動の日とか言ってたから、粗大ゴミとして出されるんじゃないのかな」
ベッキオ 「なんだと、俺たちがゴミだと」
宇宙服人形 「な〜に言っちゃってんの、ベイベー。だいたい、ここを抜けだしたのは君たちでしょ。ゴミにされるのが嫌だから、抜けだしたんじゃないの?」
ベッキオ 「うるせえ、このやろう」
ジュリア 「やめて、ベッキオ」
ベッキオ 「だって、こいつ……」
ミットーリオ 「行こう。どっちにしても、ここにはもういられないよ。僕たちの居場所は、もうないんだ」
ベッキオ 「俺は、はじめっから、こんなところにはいたくねえ。だから、それでいいけど。でも、ジュリアは……」
と、ベッキオはジュリアを見る。
ジュリア 「私も、みんなと一緒に行く」
ミットーリオ 「仕方がないよ」
三人が、舞台の袖に向かってとぼとぼと歩く。
宇宙服人形 「あれ? 僕、なんか悪いこと言った?」
ベッキオ 「うるせえ」
宇宙服人形 「君たち、ここが嫌になって、出ていったんだよね?」」
ベッキオ 「ああ、そうだ」
宇宙服人形 「じゃあ、別に問題ないよね」
ベッキオ 「ああ。ぜんぜん問題なしだ」
宇宙服人形 「僕が、君の役を取ったからって、怒ってないよね?」
ベッキオ 「ああ、怒ってない。せいぜい、火星で宇宙人をやっつけることだな」
宇宙服人形 「応援、ありがとう。でも僕、宇宙人に、食べられる役みたいなんだ」
ベッキオ 「そう。それはよかったな……」
そして、袖に消える三人。
暗転。